・平成29年(2017年) 自然農39年目の稲づくり(川口由一氏)

 今年も水田では稲が出穂、開花、交配の営みを盛んにしています。この自然農39年目での事ごと=(水稲)=をお話しいたします。

 2年前の報告と少しの変化があります。それは水田の変化と視点の違いからによるものです。

 

 奈良盆地の東南に位置する水田で上の田と下の田の落差は50cm前後。土質は半砂壌土で耕作土は40cm前後でつくられており、水稲づくりに必要な水は景行天皇陵の(堀の)水。盆地の最高気温は36度位、最低気温は−4度位。初霜は11月中旬、遅霜は4月末の気候です。

 

【苗床作り】

 今年平成29年度は、苗代づくりは4月20〜21日の二日間で種降ろしをしました。

 籾種は脱穀時、唐箕で風選別したものをさらに一粒一粒、姿、形、色の良いものに選別しました。種子量は一反(10アール)当たり2.5合用意。苗床の面積は11m×1.2m位とする。

 苗床は腐蝕土(約11〜12cm)の層を平鍬で両側に取り除きます。生えている草と草の種を除く目的と養分過多による発芽障害をさけるためです。

苗床の様子(2017/5/27、photo by 自然農・いのちのことわり)
苗床の様子(2017/5/27、photo by 自然農・いのちのことわり)

【苗床期】

 苗代期間は約2ヶ月間で稲の一生のほぼ三分の一の期間に当たりますので、健康で丈夫な苗に育つよう手助けします。苗代は水を入れない畑苗代です。

 密にならないように場所を用意し、約1ヶ月後に発芽して4cm前後に育ちます頃に足元の草を抜き、10日後の頃再度、除草を行なって草に負けないで育つように助けますと、田植え時には2〜3本の茎に分けつしています。

 一回目の除草と二回目の除草後に米ぬかないし米ぬかと菜種かす混合のもので補い、元気よく育つべく種子量と同量から倍量ほどを苗上からふりまいて、稲わらないし茎の長い草で葉上にのっている米ぬか等を払い落とします。

 

【田植え】

 田植えの条間は50cm、株間早生種は40cm、中生種と晩生種は50cmで一本植え。(自然農を始めた当初は土地がやせているので40×25の一本植えでスタートし、やがて土地が豊かになるにつれ株間を30cm→35cm→40cm→50cmと広くしていく。このことによって田植え時間が短縮する。茎葉が強く健康でのびやかに育ち、茎数が多く、30本→40本、50本、60本、70本と増えるようになる。)

 田植えは一本植えが基本です。2本、3本植えにすると分けつの営みで増えてくる茎が衝突して、成長の勢いが害なわれることになります。

 株間40cmから50cmに広げたのは、昨年の平成28年からです。来年は45cmに戻したほうがよいのではと今から考えています。

 

 不耕起にして約40年の間に腐蝕土が上に上にとつくられ重なって約12〜13cmくらいの層を成しています。この豊かな層から恵みをもらって稲は健康に育ちます。ゆえに肥料の必要がなくなります。

昨年の田植えの様子(2016/6/18、photo by 自然農・いのちのことわり)
昨年の田植えの様子(2016/6/18、photo by 自然農・いのちのことわり)

 田植えは完全に腐蝕した部分に植え付けます。苗床から苗を約3cm程の土をつけて平鍬で堀上げ、苗箱にいれて引きずりながら一本一本丁寧に植えます。深すぎると茎をつくり増やしていく分けつの営みを害ね、浅すぎるとしっかり立つことできず、根が育ちにくくて分けつ悪く成育悪くなります。

 

 今年も田植えは6月24日に5〜6名の手伝いを受けて7〜8時間かかりました。今年の作付け面積は7畝です。三年前から半分にしました。年令に応じてのことです。

 健康で茎の強い成長した苗を、冬の草とすでに育ちつつある夏の草を刈らずに草をかきわけて一株ずつ丁寧に植えました。

 水位は畝上水なしから、低いところは1〜2cm位で作業をしました。

 

【除草】

 田植え後一週間位で活着始まると考えられるので除草に入りました。除草が遅れると他の草々に負けて成長が悪くなるゆえに早めに行ないました。

 田植え後の除草期間は早生種で7月末まで、中生種で8月5日頃まで、晩生種で8月10日頃終えるようにしました。

 この期間の除草は稲の成長に欠かせない大切な作業になります。除草を適期に充分行なわないと稲の成長が悪くなります。除草の終りが遅れると、8月初旬からの幼穂形成の営みを害ねることになりますゆえに注意せねばなりません。除草はこの幼穂形成期に入る分けつ期における大切な成長の手助けです。

 一回目は一条置きに行ない、二回目は残りの条間を行ない、三回目は仕上げの除草で三条を刈っていきます。左右の隣の条にも手をのばして地上部3cmくらいから刈ってその場に敷いておきます。

 一回目の除草は草の茎を残さぬように、やや深くに鎌を入れて刈り、三回目の仕上げの草刈りは稲の根を害ねないように地上部のみ刈るようにしました。

 

【条間と株間】

 除草作業の際、条間が40cmくらいではややせまくて、稲の茎を折ることになり作業を進めづらいゆえに50cmに2年前から広げました。

 株間は除草作業と関係はありませんが、広すぎると太陽の光がいつまでも多くとどいて草はいつまでも繁り続けます。

 昨年は水との関係と草刈り作業が早めに行なえたゆえに最後まで草に負けることなく成長がよくて完熟しましたが、今年は田植えと草刈り作業いづれも一週間遅れたゆえにと分けつ期に水がすっかり無くなることと重なって稲の成長が少し遅れたように思えます。

 そのようなことがあったので来年は株間はそれぞれ5cmせまくとるようにした方がよいと考えています。したがって晩生、中生種は45cm、早生は40cmを目安に。

成長期の稲(2017/5/27、photo by 自然農・いのちのことわり)
成長期の稲(2017/5/27、photo by 自然農・いのちのことわり)

【水管理】

 草に負けぬように田植え後1ヶ月から40日の間の除草の時期と刈り方が重要になりますが、水との関係も重要になります。

 水深5〜10cmは深水の感があって稲は徒長し、軟弱となります。又、亡骸の層や新に投入する草、麦わら等が急速に腐蝕して高濃度の養分で若い稲の根を害ねて成長を害ね、やはり軟弱となり病気に追いやることにもなります。

 基本は畝上2〜3cm、水田の低い場所でも5cmまで位とし、高い場所は水無しで1週間から10日ごとに畝上に水は無くなるように配慮します。また半月に一度くらいは溝にもほぼ水の無い状態が1〜3日間位あると根の張っていく地下にも空気や空気中のものがとどいて健康に育つと考えられます。

 草の成育を押さえて除草、草刈りの作業を軽減、或いは行なわなくてもよいようにと深水の状態を続けると軟弱、徒長等で稲にとってはマイナスになると考えられます。いづれも稲が健康に育つことを中心にして作業を見守り行ないます。

 

【稲刈り】

 8月中旬以降はもう水田に足を踏み入れての作業はなくて、最後は秋深くなる季節11月の稲刈り、収穫の作業になります。

 

稲刈りの様子(2017/11/19、photo by 自然農・いのちのことわり)
稲刈りの様子(2017/11/19、photo by 自然農・いのちのことわり)
稲架掛けの様子(2016/11/20、photo by 自然農・いのちのことわり)
稲架掛けの様子(2016/11/20、photo by 自然農・いのちのことわり)

 稲刈り時期は穀類共通ですが完熟させることが大切です。しかし稲は刈り取り後約1ヶ月間、稲木を立ててそこで自然に乾燥させて、さらにその後足踏み脱穀機で脱穀の作業しますゆえに、穂首に力が無くなって落穂が多くなるといけないので、刈り取りの適期の見定めが大切です。

 稲の成長は茎を増やしていくのも開花交配の時期も一斉にではなくて、時差が1週間から10日程生じます。それで全体の三分の二くらい完熟した頃を稲刈りの適期とします。稲の姿をながめての判断、あるいは穂が三分の二くらい成育が終り、黄緑色から黄色、さらに枯れた黄土色となって生気、つやが衰えた頃、あるいは茎、葉、穂を含めた全体の生気、色、つやがそれまでの勢いが無くなり、衰えを表した頃が刈り時です。

 乾燥の期間は地形や気候によって夫々の地で異なりますが、奈良の我が水田では1ヶ月間、雨や風、特に12月に入っての季節風を受けてしっかりと乾燥します。海から吹く塩の含んだ風を受けるところでは10日間前後で乾燥するかと思います。

 

稲架掛け後の様子(2017/11/25、photo by 自然農・いのちのことわり)
稲架掛け後の様子(2017/11/25、photo by 自然農・いのちのことわり)

 若刈りや乾燥不足は脱穀後の籾摺りが難となり、1年間の貯蔵に耐えられなくなり、かびを招き味を悪くすることになります。

 

【脱穀・籾摺り・精米】

 11月中旬、稲刈りをして、脱穀は12月中旬行ない、紙袋で籾貯蔵とし、その都度1週間分ずつ位の籾摺りを行ない、精米は食す毎に5分〜6分搗き位にしています。米ぬかは野菜の補いにめぐらせます。

 

 脱穀後の稲藁はすぐに育った場所にそのまま切らずにふりまいてもどします。次のいのち達の舞台がそのことによってさらに豊かになります。また8月中旬以降から11月中旬までに稲の足元で生きて育った種々多くの草々は種子を結び、茎葉、根をその場で死んで横たわり土中でも地上でも微生物の糧となり、結果腐蝕してさらに豊かな生命達の舞台となります。水中の草々、ジャンボタニシ等の小動物も冬期に入ると子孫を残して多く死んでいきますのでやはり水田が豊かになります。夫々の動植物が新に体をつくり夫々が成分を生みつくり、やがて死体を地表にねかせるゆえに、さらに偏りのない豊かな水田になります。地上では新しい一夏の亡骸や腐蝕土のスキ間から夏の草に変わって冬の草が姿を現わし、次の年の夏まで生きて育って全うして、一生終って又々死体を横たえて水田を豊かにします。決して耕さないゆえに生じる豊かな腐植土で自然の森や山と相似た姿です。この水田で冬期は麦、小麦が中心となり他の草々、土中に冬眠した虫達と共に生きて活動盛んとします。

 尚、稲藁はえんどうの支えや来年の稲を束ねるに必要とする分だけ確保します。

 

【ジャンボタニシ】

 3〜4年前から姿を現わし始めたジャンボタニシ、今年はさらに増殖した様子です。

 1回目除草の際には、茎に産卵したピンク色の卵を取り除き、溝に落としたが、次々と産卵して1株に7〜10個と産み続けるゆえに追いつかず、2回目の除草の際には、産み孵化するに任せました。成長への被害のほどは今のところわからずです。

 

【農作業について】

 田植え、稲刈り、脱穀の三度の特別な作業は7〜8名の人達に助けられています。日々の作業は5年程まえから勉強と兼ねて手伝ってくれている小島さんと二人で日々少しずつ手入れを重ねています。作業時間は夏は早朝5時半頃から9時頃までとし、9月に入ってからは朝6時半頃から10時半頃まで。作業後はシャワーを浴びて身体を洗い、朝食と昼食を兼ねた食事。食後はゆっくり休みます。午後は勉強や執筆の仕事等。雨天と週1回位は休息日。日々の農作業で心身ともに健康でありたいとの思いと自然農の先を歩む者のつとめとして、楽しくやっています。これも年令に応じてのことです。

 

 麦、小麦、大麦、他の冬期の雑穀のことは後日に1年間、あるいはここ2〜3年の様子をお伝えいたします。耕さず、草や虫を敵とせず、肥料農薬を用意せず、用いずによる田畑の姿、作物の姿を実際に現わさんがためと、新た新たに変化する自然農の田畑で生じる問題に対して、具体的に答えを見出し示していくために今年も少しずつですが続けています。

(2017/9/14 奈良県 川口由一さん投稿)

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